世界で最も高い知名度を誇る時計ブランド、ロレックス。メンズ腕時計では圧倒的な人気を誇るだけでなく、レディースにおいてもカルティエに次ぐ人気ランキング上位の常連ブランドです。
実は筆者もロレックスに憧れて10年ほど前に購入し、以来愛用しています。選んだのはオイスター パーペチュアル。とはいえ、一般的に想像されるそれとはイメージの異なる、1950年代に製造されたヴィンテージオイスターでした。
「高級ブランドの代名詞」「資産価値が高い」、そのようなイメージの現行ロレックスをよそに、なぜ、あえてヴィンテージを選んだのか?
今回は筆者の愛用ロレックスをご紹介させていただきながら、ヴィンテージならではの魅力に触れてみたいと思います。
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この記事を書いたのは…
上村(UEMURA)
ジャックロード・ベティーロードのWEBサイト運用スタッフ。CWCウォッチコーディネーター。ベティーロードの公式Instagramでは“天の声”役で毎週金曜日のインスタライブに出演中!愛用時計11本のうち、気がつけばヴィンテージウォッチが半分を占めていた愛好家のはしくれ。
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ロレックスの中では比較的手頃な価格で入手することができるため、エントリーモデルのような位置づけで語られることが多いオイスター パーペチュアル。
確かに仕様はシンプルですが、他モデル同様に高性能なスペックを有していることに変わりはなく、選択肢豊富なサイズ展開やデザインなどで、多くのロレックスファンを魅了しています。
こちらがオイスター パーペチュアルの現行モデル、Ref.276200です。ドームベゼル(丸くつるんとしたベゼル)と3連のオイスターブレスレットを採用したシンプルなデザインで、デイト表示機能がありません。
オイスター パーペチュアルはこのように、どんなシーンにもフィットしそうな普遍的なモデルがある一方で…。
上の画像のような、遊び心のあるカラーダイヤルもラインアップされていたりします。ちなみに画像の時計は、2020年の発売当初から“ティファニーブルー”を彷彿させるとして大人気に。現在でも二次流通価格が定価を大幅に上回る人気モデルです。
それでは20年ほど前のオイスター パーペチュアルはどんなデザインだったかというと?
こちらは1999年~2006年頃に販売されていた旧型番のRef.77080。ほとんど印象を変えていないことがわかりますね。画像のような、エクスプローラ―風の3、6、9アラビア数字ダイヤルは現行品番にはラインアップがないため、中古の旧型番モデルもそれはそれで高い人気を保っています。
さて、私が所有しているロレックスもオイスター パーペチュアルです。Ref.77080からさらに時を遡り、なんと戦後間もない1950年代に製造された1本で、型番はRef.6509。ロレックス通の間では“4桁”と通称されている、いわゆるヴィンテージモデルです。
まずは百聞は一見に如かず、私の愛用オイスター パーペチュアルをどうぞご覧ください。
筆者の所有する1950年代のオイスター パーペチュアル Ref.6509
いかがですか?
現行型番のオイスター パーペチュアルや、それとはあまり印象の変わらなかった旧型番と比べると、ずいぶん印象が違うと思われた方が多いのではないでしょうか。
古い時代のモデルならではのディテールが随所に散りばめられているので、以下にその一部をご紹介させてください。
スモールセコンド付きは、ヴィンテージロレックスの中でも年代の古いものに限られる
まず目に飛び込んでくるのは、6時位置のスモールセコンド。
スモールセコンドとは、通常は時分針と同軸にある秒針(センターセコンド)の位置をずらし、独立してレイアウトした仕様のことです。スモールセコンド仕様のロレックスは現存数が少なく、1950年代以前に製造されたものがほとんどです。
1926年にロレックスが発明したオイスターケースは18Kイエローゴールド製で、ロレックスらしいフルーテッドベゼルを備えています。
アルファ針と呼ばれる時分針と、珍しい菱形のインデックスもゴールドカラー。マットな質感のアイボリー文字盤の上で光を反射してキラキラと輝く様子は、本当に綺麗です。
独特な質感のプラスチック風防は、ヴィンテージ愛好家にとって大事なディテールの1つ
横から見ると分かるように、風防にはかなり厚みがあります。これは風防の素材に樹脂ガラス(プラスチック)を用いているためです。
この時計に限らず、ヴィンテージロレックスの多くはプラスチック風防を備えています。サファイアガラスに比べると柔らかく、傷がつきやすい素材ですが、磨くことで簡単に綺麗になります。
プラスチック風防には水飴を固めたようなとろみ感があり、ヴィンテージウォッチ愛好家にもファンの多いディテールです。
クラウンと十字が刻まれた、当時のオリジナルと思われるりゅうず
りゅうずにはロレックスのクラウンマークのほかに、スイスの国旗を表すといわれる十字架のマークが刻まれています。これも年代のかなり古いモデルにしか見られないものです。
ほかにも語りたいことがたくさん詰まっている1本ですが、マニアックになりすぎるのでこの辺りで自制しておきますね。
さて、ロレックスがオイスター パーペチュアルを誕生させたのは1931年のことです。そのファーストモデルはゴールド製で、6時位置にスモールセコンドを備えていました。
そこから現在の姿へたどりつくまでの1世紀に近い歴史の中で、さまざまな技術的・デザイン的試行錯誤が繰り返されてきたオイスター パーペチュアル。
私の所有するヴィンテージオイスターは、その試行錯誤の過程における、ごく初期の姿といえるでしょう。
私がこの時計に出会ったのは、今から10年ほど前のことです。
当時、私は業務の一環でオンラインストアに掲載する着用画像の腕モデルを担当していました。そのため、今思えばとても幸運なことに、当時入荷してくるレディースヴィンテージウォッチのほぼ全てを試着する機会に恵まれていたのです。
この時計に出会ったのはそんな試着撮影の折りでした。撮影待ちのトレーに並べられていた姿を目にした瞬間から気になってしまい、1週間ほど悩んだ末、購入することに決めました。
もちろん、ロレックスの現行モデルへの憧れは当時からありました。時計を扱う人間として、いつか自分もロレックスがほしいと漠然と考えていました。
ですが、そのロレックスがヴィンテージであるとは、実は考えてもいなかったのです。そんな私が、なぜ結果的に現行モデルではなく敢えてヴィンテージを選んだのか、当時を振り返って考えてみました。
まずは、現行とか中古とかヴィンテージとか、そんな分類を超えて、このデザインに一目惚れしてしまったことが最大の理由です。
特に、オイスター パーペチュアル×スモールセコンドの物珍しさには心を揺さぶられました。長さ3mmほどの秒針は驚くほど繊細なつくりで、自動巻きローターが振れた瞬間に秒針が文字盤をなめるように回り出したときは、えもいわれぬ感動を覚えました。
ですが、いかに一目惚れしたといっても、購入に踏み切るまでには自分の中でもう1つ言い訳が必要でした。それは何だったと思いますか?
10年前に撮影室でこの時計と出会った際、私は試着記念に自分のスマートフォンでたくさん写真を撮りました。ですが、実際に目で見て、肌で感じる雰囲気とは「何かが違う。実物はもっと素敵なのに…」。
あくまで個人の感想をいわせてもらえば、現行の時計は彫りが深くてはっきりした顔立ちが多いせいか、たいてい写真映りが良いです。私のような素人が撮影しても、もしかしたら写真のほうが実物以上によく見えることもあったり、なかったりします。でもヴィンテージウォッチの多くは違うのです。
ヴィンテージウォッチには、長い時を経てきたからこそ宿る、何ともいえない味わい深さがあります。そこら辺にポンと置くだけでも実に絵になるのに、実際には絵では表現することができないというこの経年の雰囲気は、所有する者だけが楽しめる特権。試着で時計を撮りまくってみてそう感じたことが、購入への後押しとなったのです。
その後の10年間、このヴィンテージロレックスは私の腕時計ライフをより楽しく豊かなものにしてくれました。他には代わりのいない、かけがえのない愛用時計です。
世界で最も名の知られたブランドといわれ、腕時計の技術発展をリードしてきたロレックス。だからこそ、そのヴィンテージ作品には時計史の貴重な1ページを垣間見るような特別感があります。
ここまで私の愛用オイスターについて語らせていただきましたが、ここからは現在ベティーロードにラインアップされているヴィンテージロレックスから、魅力的な個体をいくつか取り上げてご紹介したいと思います。
本記事を執筆している現在、店頭やオンラインストアにて販売中の商品のため、すでに販売済みの場合もありますことをご了承ください。
まずはこちらのパーペチュアル バブルバック。なんと1940年代に製造されたモデルです。6時位置のスモールセコンドは段が付いており、メリハリのある印象。端正なデザインで、ダイヤルの経年変化も良い雰囲気を醸し出しています。
バブルバックとは裏ぶたが泡のように膨らんで見えることから名付けられた愛称で、ロレックスのパーペチュアル(自動巻き)機構黎明期のみに見られる大変貴重なもの。熱烈なコレクターも存在します。さらにいうと、この年代でピンクゴールドが使用されている時計は本当に数が少ないのです。
ちなみにこちらの時計、横顔も素晴らしく可愛らしいので、そこだけでも一目惚れの価値があります。
いかがですか?ドーム型のプラスチック風防が創り出す景色も素敵ですし、このコロンとしたフォルムも、思わず愛おしくなるような、たまらない魅力が感じられないでしょうか。
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続いて1967年製造のオイスター パーペチュアル デイト Ref.6516をご紹介いたしましょう。その名の通り、デイト機能のついたオイスター パーペチュアルで、流通数の少ないモデルです。
印象としてはだいぶ現行モデルに近づいてきたように感じますが、実際に手にすれば現行モデルとはかなり趣が異なることに気が付かれると思います。
まず、とても軽いです。主な要因はブレスレットのコマが空洞に作られているためで、振るとシャラシャラと軽妙な音がします。
左がヴィンテージ、右が現行のオイスター パーペチュアル
中空パーツは製造に手間とコストがかかるので、現行ロレックスは全て中身の詰まったソリッドパーツが採用されています。そのかわりに重厚感が増しているわけですが、ヴィンテージのオイスターはそれとは対極の華奢な印象で、思わず手を差し伸べたくなるような“そこはかとなさ”があります。
ちなみに、こちらの時計にはリベットブレスという、ヴィンテージロレックスにおける人気のブレスレットが装着されています。
極めつけはかなり厚みのあるプラスチック風防で、横から文字盤をのぞき込んだときの雰囲気は最高です。シルバーダイヤルのコンディションも申し分ないですし、非常におすすめできる1本です。
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最後はやっぱりカメレオンをご紹介したいと思います。ヴィンテージロレックスといえば、カメレオンを抜きには語れません。
カメレオンは1950~60年代のごくわずかの期間だけ製造された非常に希少なコレクションです。裏ぶたのスリットにベルトを通すだけという画期的なベルト交換システムで特許を取得。コーディネートにあわせてベルトを“着替える”という発想は女性たちから親しまれ、変幻自在に印象を変えるカメレオンの愛称が与えらました。
カメレオンについて、詳しくは以下の記事で解説しております。
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絶対数が少ないため市場ではあまり流通しないカメレオンですが、ベティーロードでは特に力を入れて集めている時計の1つで、これほどの在庫を揃えるお店は全国を見ても当店のほかにありません。その自慢のコレクションの中から、おすすめの1本をご紹介したいと思います。
こちらは多面体カットのケースが美しく、さまざまなケースのデザインが存在するカメレオンの中でもとても希少な1本。シャンパンゴールドのダイヤルカラーも高級感が漂っています。
こちらの時計には当時のオリジナルボックスが外箱、内箱ともに残されており、中には古い年代のベルトも4本付属しています。マニア心をくすぐる逸品です。
約1.5cmというとても小さな指先サイズの時計ながら、それでも裏ぶたを開ければ、ロレックスならではの精密な機械がぎっしりと詰まっている実力派。ベティーロードスタッフも憧れる、いつかはほしいヴィンテージウォッチの筆頭、それがカメレオンです。
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おすすめのヴィンテージ ロレックス、いかがでしたでしょうか。
さて、最後にみなさまに質問です。
現在ロレックスは年間どのくらい時計を製造しているかご存じでしょうか?
実は、徹底した秘密主義をとっているロレックスは年間の製造本数を公表していません。ですが、ムーブメントのクロノメーター検定にパスした本数などから、年間80~100万本ほどではないかといわれています。
「ロレックスのブティックへ足を運んでも商品がない」といわれて久しいにも関わらず、実際には毎年これだけの本数が製造され、世界中で流通しています。それでも需要に供給が追い付かないことを考えると、あらためてロレックスのすさまじい人気を思い知らされますね。
逆にいえば、ロレックスの現行モデルはそれだけ多くの人が所有しているということ。
ショーケースに並ぶロレックスのヴィンテージウォッチたち
でも、私のオイスター パーペチュアルと同じモデルを所有している人は、世界でもごくわずかに違いありません。ヴィンテージウォッチは、そんな密かな特別感で持ち主の心をくすぐってくれます。
過去に遡って製造することも、タイムマシンで過去の所有者の元に行き、未来で貴重品になるから大事にするように諭すこともできない、今ここにある限りの時計、それがヴィンテージウォッチです。
この記事を読んでヴィンテージに少しでも興味を持たれた方がいらっしゃれば、ぜひオンラインストアの品揃えをご覧になってみてください。
そして可能であれば東京・中野ブロードウェイの店舗へ足をお運びいただき、拙文では伝えきれないその魅力をお楽しみいただければ、望外の喜びです。
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