1983年の誕生以来、熱狂的な人気を誇ったカルティエのパンテール。2008年頃に一度生産終了となったのちもカリスマ的な人気を保ち続け、2017年に満を持して復活を果たしました。
現在カルティエの公式サイトでもレディース腕時計のトップを飾るパンテールは、カルティエが今最も力を入れているレディースウォッチといっても過言ではありません。
今回はそんなパンテールについて詳しく解説いたします。
パンテール ドゥ カルティエ ブレスレット Ref.N6033402
パンテールとはフランス語で豹(パンサー)を意味します。豹は、カルティエを象徴する重要なアイコン。ギフトシーズンなど、精悍な大人の豹や、つぶらな瞳が可愛らしい赤ちゃんの豹が登場するカルティエの広告を目にしたことのある方も多いでしょう。
初めてカルティエがその作品に豹のモチーフを登場させたのは1914年のことです。当時はシンプルなオニキスのスポッツモチーフ(豹の模様)としてデザインされました。
ですが、パンテールがカルティエを象徴するアイコンとして存在感を顕すのはもう少し後の時代。ある一人の女性の存在なくして、カルティエのパンテールがこれほどのブランド・アイデンティティーを持つことはなかったかもしれません。
その女性の名はジャンヌ・トゥーサン(1887-1976)。ガブリエル・シャネルがオートクチュール界の女王であるならば、ジャンヌ・トゥーサンはオート・ジョワイユ(特注宝石製作)界に君臨し、その世界に大きな影響を与えた女性でした。
ジャンヌは第一次世界大戦のさ中、当時をときめくカルティエ一門の御曹司ルイ・カルティエとパリで出会います。ジャンヌのセンスのよさや自由奔放なエネルギーに魅了されたルイ・カルティエは、彼女をデザイナーとしてカルティエに雇い入れます。ジャンヌはその期待を裏切らず、フランス人らしい優れた審美眼を持つデザイナーとして次第に高く評価されていきました。1933年、ルイ・カルティエはジャンヌにカルティエの高級宝飾部門の全権を委任します。カルティエ一族出身ではないジャンヌの大抜擢は、当時としては異例のことでした。
それまでのカルティエのデザインといえば、幾何学的な様式美が特徴のアール・デコや、自然界には存在しない左右対称に整ったガーランドスタイルを中心としていました。ですがジャンヌは早くから自然回帰の時代がくることを予見して、1930年代後半にはさまざまな自然モチーフのジュエリーの製作に取り組んでいます。その中で最も力を入れていたのがパンテール(豹)モチーフでした。
ジャンヌの手によるパンテールは、高度な技術によって立体的に表現され、モナコ后妃となったグレース・ケリーや、時のファッションアイコンで、のちのウィンザー公爵夫人となるウォリス・シンプソンを魅了し、時の富裕層を中心に一世を風靡しました。
実はルイ・カルティエの秘められた恋人だったといわれているジャンヌ・トゥーサン。パンテールはもともと、ルイ・カルティエが彼女に与えた愛称。当時の女性には珍しく毛皮を好み、家中に毛皮が溢れていたそうです。
ルイ・カルティエは出会って間もないジャンヌに魅了され、オニキスとダイヤモンドで象ったパンテールをヴァニティーケースにあしらい、彼女のために自らデザインして贈り物にしました。2人は結婚を望むも、名家の出身ではなかったジャンヌを迎い入れるのに、一族から強固な反対にあったため諦めざるを得なかったといいます。
結婚という形ではなく、その生涯をカルティエに洗練と革新という基礎を築くことに捧げ、その愛を昇華したジャンヌ・トゥーサン。彼女の活躍にスキャンダルという障害を与えないため、別の女性と結婚してカルティエの第一線から身を引き、遠くからジャンヌを見守ったルイ・カルティエ。
1941年にルイ・カルティエが亡くなったあとも、ジャンヌは1976年に人生の幕を閉じる直前まで、カルティエにインスピレーションを与え続けました。強く、しなやかなパンテール(豹)は、自由を愛し、大胆に生涯を生きぬいたジャンヌのイメージにピッタリ。カルティエにとって特別なモチーフである所以が分かるような気がしますよね。
今やメゾンのシンボルにとどまらない、カルティエにとって不朽のアイコンであるパンテール。豹を象ったカルティエのジュエリーを目にしたことのある人は多いでしょう。
パンテール ドゥ カルティエ リング 18Kイエローゴールド、プラチナ、ダイヤモンド
パンテール ドゥ カルティエ チャーム 18Kホワイトゴールド、ダイヤモンド
1914年に初めてパンテールモチーフのジュエリーウォッチが登場して100周年を迎えた2014年に、パンテール ドゥ カルティエのジュエリーはコレクションを拡充し、カルティエのクリエイティブの中でますます存在感を放っています。
一方、パンテールの名を冠した腕時計「パンテール ドゥ カルティエ」ウォッチが発表されたのは1983年。その2年後からバブル景気に沸き立った日本において、パンテールはおしゃれな女性に熱狂的な人気があったため、パンテールのコンビモデルが当時の憧れとして記憶に残っているという方もいるのでは?
ところでこのパンテールウォッチ、わかりやすく豹を象っているジュエリーに比べると、正直「豹(パンテール)」感がないですよね。記事を執筆している筆者も、なぜこの時計が“パンテール”の名を冠しているのか最初はわかりませんでした。デザインは角の丸い正方形のフェイスや8個のビスを使用したデザインなどは、サントスのそれと似ているように思います。
それではこの時計がパンテールたる所以はどこにあるのでしょうか?詳しく解説したいと思います。
まずはパンテールの側面のラインをご覧ください。これが、腕を伸ばした豹の背中から頭、手のラインを表現しているのだそうです。確かに、正面からみると工業製品らしさのある時計ですが、サイドを見ると有機的でグラマラスな感じのするラインにハッとします。
そしてブレスレットにもご注目。カルティエには「マイヨンパンテール」シリーズというジュエリーがあるのですが、一部にこのパンテールウォッチのブレスレットと共通するデザインが与えられています。
これは豹のひとつひとつの足跡をイメージしたコマをフラットリンクさせたしなやかなジュエリー。それがそのままパンテールウォッチのブレスレットに生かされているのです。
コマが小さいため、しなやかに腕に沿ってくれるパンテールのブレスレット
パンテールウォッチは、豹の要素を抽象的に取り入れながら、コンセプトとして豹の持つしなやかな美しさを体現した時計といえそうです。
それではカルティエのサントスウォッチと見比べてみましょう。
左/パンテール Ref.WSPN0007 右/サントスデュモン Ref.WSSA0023
正面はともに角に丸みを持たせた正方形。8個のビスを使用したベゼルデザインも共通しているので、パンテールとサントスは似ていると感じる人が多いのでしょう。
ちなみにビスはサントスを象徴するモチーフ。飛行機のボディーのパーツをつなぐネジからヒントを得たものですが、1970年にはカルティエを代表するジュエリーであるラブブレスにデザインとして取り入れられ、恋人たちを繋ぐ愛の証としてカルティエのなかでも特別なモチーフとなっています。パンテールのビスはサントスのそれよりも小さく控えめで、より女性らしさを感じられるパーツになっています。
ともにシリーズのミニサイズであるミニパンテールとサントスドゥモワゼルも比較してみましょう。
左/ミニパンテール Ref.WSPN0019 右/サントスドゥモワゼル Ref.W25064Z5
サントスドゥモワゼルはベゼルがシンプルでビスもありませんが、全体としての印象はやはり似通っています。
それではパンテールとサントスドゥモワゼルの側面のラインを見比べてみましょう。
パンテールの側面
サントスドゥモワゼルの側面
サントスドゥモワゼルのサイドのラインはエッジの効いたシルエットに仕上げられています。一方パンテールのサイドのラインにはエッジが一切なく丸みを帯びており、サントスと全く異なります。
ブレスレットも比べてみましょう。
パンテールのブレスのコマ
サントスドゥモワゼルの側面サントスドゥモワゼルのブレスのコマ
ブレスレットも似ていますが、サントスのブレスレットのコマは表面側がやや直線的。パンテールは表面に丸みがあるのが特徴です。
上がサントスドゥモワゼルのブレス、下がパンテールのブレス
この丸みを施された小さなコマのひとつひとつが周囲の景色を映り込ませ、大きな存在感を放つのです。パンテールがジュエリーのように感じられるのはこの美しいブレスレットが大きな役割を担っているといえるでしょう。
パンテールは小ぶりながら女性らしい丸みの感じられる華やかな時計。全体的に薄く華奢な印象があり、ジュエリーのように使用できる時計として人気があります。日本においてはカルティエウォッチの中で最も人気のあるタンクフランセーズは、パンテールに比べるとボリュームがあり、プレーンなモデルはややカジュアル感のある時計。パンテールはエレガントな要素が強く、特に年齢を重ねてからも似合うことから、一生ものの定番ウォッチとして大変おすすめできるモデルなのです。
パンテールを普段から愛用しているという当店のスタッフにインタビューをしました。こちらもぜひご覧ください。
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パンテールにはミニパンテール、パンテールSM、パンテールMMのサイズ展開があります。ここからは各サイズについて紹介します。
パンテールの中で最も小さなミニパンテール。ケースサイズは25mm×21mmです。ジュエリーらしい表情を見せてくれるミニサイズはダイヤモンドを使用したゴージャスなモデルでも使いやすい印象。旧型モデルは裏ぶたにあるボタンを先の細い棒(楊枝など)で押すことで時間を調整する仕様になっており、ケースサイドにりゅうずがありません。2017年の新型モデルからミニパンテールもケースサイドにりゅうずを備えるようになりました。
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22mm×30mmのスモールサイズのパンテールです。ミニパンテールより一回り大きいのでシンプルなモデルでも着用したときに華やかな存在感が感じられます。腕時計としてもブレスレットとしてもバランスのいいサイズ感です。
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27mm×37mmのミディアムサイズのパンテール。時計としての実用性にも優れるミディアムサイズはビジネスにもおすすめ。ミニサイズもミディアムサイズも厚みは6mmと非常に薄くできているので、スマートに着けることができるでしょう。
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パンテールは2008年頃に一度生産終了となります。熱狂的な人気のあった時計なので多くのリクエストがあったのでしょうか、2017年に復活を果たします。デザインはほとんど変更されませんでしたが、いくつかの違いが見られます。
ステンレス×ゴールドのコンビモデルにおいて、それまでステンレス部分にヘアライン仕上が施されていた旧モデルに対し、新モデルは全てがポリッシュ仕上げになりました。
旧型番のパンテール・コンビモデル。ステンレス部分がヘアライン仕上げになっているのが特徴
この仕上げの違いだけでもより艶やかでジュエリー感が増しており、かなり印象が変わったといえる点です。
通常3時位置に備わるりゅうずを持たず、裏ぶたにあるボタンを押すことで時間調整をする必要のあったミニパンテールも、モデルチェンジ後はりゅうずを備えるようになりました。
左・旧型番のミニパンテール/右・現行型番のパンテール・ミニモデル
デザインはほとんど変更されなかったとはいえ、新型パンテールはやはり高価。しかも流通量が少なく、正規店よりもリーズナブルな並行輸入店にはなかなか入荷しないのが現状です。そのため、旧型の中古モデルも未だに大きな人気を誇っています。
フルポリッシュになったことでコンビモデルは同じデザインでもかなり印象が違いますが、ゴールドのモデルは旧型も新型もほとんど印象は同じであるため、リーズナブルな中古から上位モデルを選ぶのも賢い選択といえるでしょう。
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生まれ変わったパンテールはよりジュエリーとしての存在感に焦点があてられ、ブレスが長く2重、3重になるものも存在します。しっかりとボリューム感もありながら、とてもエレガントですよね。こういった商品はなかなか入荷しないレアモデルでもあります。
パンテール ドゥ カルティエのロングブレスレットモデル
いかがでしたか?
カルティエ・パンテール以外にもベティーロードでは数多くのブランド腕時計を取り揃えています。ベティーロードでは中古も新品同様のクオリティーを実現することに注力しており、仕入れた商品は全てメーカーあるいは自社の提携工房にてフルメンテナンスを行っています。中古だから…と敬遠せず、ぜひ一度専門店ならではのハイグレードな中古クオリティーを実感していただければと思います!
これを機にあなただけの1本を探してみてはいかがでしょうか?
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半個室の商談スペースもあり、小さなお子さま連れのお客さまもゆったりとご覧いただけます。お近くにお越しの際はぜひお立ち寄りください。
店内の在庫は常に変動しております。来店にて見たいモデルが決まっている場合、事前に店舗へ在庫を確認の上お越しいただくことをおすすめしております。